2014年12月06日

映画鑑賞日記: Terraferma

(2011/伊・仏)IMDb logo邦題: 『海と大陸


イタリア映画の癖にえらく暗いなあと思ったらエンディングでフランス語の歌が流れて妙に納得。輝く太陽と真っ青な海と、そこに生きるストレートな感情表現をするラテン気質の人々。それが物事の陰影をより際立たせていて良し。

舞台はシチリア地方の小島。昔は漁業が盛んだったが、今はそれも衰退し、夏場のリゾート地として観光客の受け入れに躍起になっている。ところが北アフリカからの難民船がたびたび漂着するため、不法移民のヨーロッパへの玄関口としてのイメージが定着することを嫌う観光業の人々と、人命救助優先という昔ながらの海の掟を遵守する漁師たちとの間で喧々諤々の論争がたびたび起こる。

主人公Filippoの設定もよい。父を亡くし、確たるロールモデルなしに足掻くハイティーン。必死に漁船に向かって泳いでくる難民を助ける祖父。そのことで祖父を罰する行政組織への反発。そのくせ夜こっそり沖に出たときに難民たちが必死に船に乗り込もうとすると、それを防ごうと彼らをオールで殴り倒してしまった自分。漁業はもうだめだと祖父のやり方を批判しつつも祖父の心配をする叔父の心の揺れを垣間見る瞬間。島に滞在している観光客Mauraに対する淡い憧憬。周囲の様々な物事を、その醜悪な部分まで含め見えるようになることが大人の世界に入ること。何を傷つけ何を守るのか、その結果に責任をとること。大人の表情を見せたり、子供に戻ったり、揺れる純朴な島の青年が大人になってゆく様子をよく描いています。その他周囲の人々の鬱屈した状況もリアルでいい。そしてその背後に映されるどこまでも青い空と海。なかなかのもんです。

少々最後が尻切れトンボのようにも見えましたが、とってつけたような大団円で終わるよりはこの後どうなるだろうと想像の余地を残していていいと思います。

10点満点中6点。
タグ:Drama 6/10
posted by げんまいちゃ at 00:00| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月29日

映画鑑賞日記: Muscle Shoals

(2013/米)IMDb logo 邦題: 『黄金のメロディ マッスル・ショールズ


ネイティブアメリカン達がsinging riverと呼んだ川のそばにある小さな街の小さなスタジオから、新しい音楽が次々と発表された時代があった。そのレコーディングスタジオの黎明期から人気の絶頂期にいたるまでの軌跡を追う。

音楽界のそうそうたるメンバーが次々とインタビューされていて、それを追うだけでも楽しめる。当時の音楽にそれほど詳しいわけではないけれど、純粋に音楽に打ち込む当時の彼らの熱気というものはよく伝わってくる。そしてそれを撮影する側が、その熱気に巻き込まれず一歩引いて冷静さを保っている感じがいい。それがこの作品をドキュメンタリー作品として成り立たせているように見える。

10点満点中6点。
posted by げんまいちゃ at 00:00| 島根 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月15日

映画鑑賞日記: Pozitia copilului

(2013/ルーマニア)IMDb logo  邦題: 『私の、息子


テーマを一言で言うならば、母子間の愛憎というか、そういったところなんだろう。でもこの「愛・憎」って、親子の場合はどこまでもどこまでも深いものになり得て、それは世界共通なんだということが身震いするくらいよくわかる作品だった。

(母親の目から見れば)いつまでたってもしゃんとしない息子が交通事故で子供を死なせてしまう。財力もありあちこちにコネもある両親はありとあらゆる手を使って息子を不起訴にすべく奔走しようとする。一方、前々から両親、特に母親の過干渉を嫌っていた息子は、両親のそういった姿勢に反発し、両者の溝が深まってゆく。

両者の気持ちはものすごくよくわかる。親の「愛」でがんじがらめに縛られ自分で意思決定ができない息子、それを振りほどくためにはこれまでのすべてを破壊することを厭わないくらいの決心が要ること、親はそれを理解したがらず必死になって息子を繋ぎとめようとすること、その一方で独り立ちできない息子に焦燥感を感じていること。

最後のシーンがいい。様々な解釈はあろうと思うけれど。息子が母親に「もう自分とは連絡を取らないでくれ。いつか必ず自分から電話するから。」という。母は動揺し、わかったと素直に返事はできないのだが、二人で被害者宅にお詫びに行った後、どうしても車から降りて自分の言葉で謝罪できなかった息子が最後になって自分の足で被害者の父親に歩み寄っていく。それまで態度を硬化させるばかりだったその父親が、息子と目を合わせて会話し、最後に握手する様子を車のバックミラー越しに見つめる、母親の表情がいい。


10点満点中6点。
タグ:6/10 Drama
posted by げんまいちゃ at 00:00| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月06日

映画鑑賞日記: Hannah Arendt

(2012/独・イスラエル・ルクセンブルグ・仏)IMDb logo 邦題: 『ハンナ・アーレント


なんでこういう伝記映画ってつまんないのが多いんだろう。扱う人物自体はすごく魅力的な人なのに。

ハンナ・アーレント。ドイツのユダヤ人の家庭に生まれ、抑留キャンプでの生活を経てアメリカに亡命した哲学者。1961年のアイヒマン裁判を傍聴し、1963年にニューヨーカー誌に『イエルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』を発表し、大論争を巻き起こす。この作品はこの騒動の間だけを切り取って、テーマを比較的はっきりさせてあるはずなのに、なんだか単なる再現ドラマみたいだった…。とりあえずこの人はタバコが好きだったんだろうなということはよーーーく判りました。

アイヒマン実験という言葉には馴染があったのですが、アイヒマンという人自体が何をした人なのかについてはよく知りませんでした。ましてやハンナ・アーレントという人もその人が起こした論争については全く。そんな中この作品を観ました。この作品は実際の裁判の記録映像もふんだんに使われ、彼女のこの裁判についての見解もよく説明されています。周囲の人間の間でも評価が分かれ、彼女自身がそのことで傷ついたことも、昔恩師との間で不倫関係にあったことも説明されています。そうなんです。ひとつひとつよく「説明」されてはいるのですが、そこから新たなるストーリーを作り出すことを怠っているように見えるんです。というわけである人物の再現ドラマとしてはよくできてはいますが、ひとつの映画作品として評価するとどうかな、という印象です。


10点満点中5点。
タグ:5/10 Drama biography
posted by げんまいちゃ at 00:00| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月30日

映画鑑賞日記: Une Estonienne à Paris

(2012/仏・白・エストニア)IMDb logo 邦題: 『クロワッサンで朝食を


老母を看取ったばかりのエストニア人アンヌに、パリに住むエストニア人女性フリーダの家政婦をしないかという話が来る。有閑マダムをいささか通り越した偏屈パリジャンヌかぶればばさまの言い分は、素朴な田舎でのアンヌには理解できないことだらけ。様々な衝突を経て徐々に二人が互いを認め始めるまでのハートフルドラマ。

フリーダ役のJeanne Moreauは1928年生まれ、ということは作品公開時は84歳? 貫禄あります、立っているだけで。彼女のほんのちょっとした仕草が格好いいんですよ。アンヌ役のLaine Mägiという方も、それをしっかり受け止めて、なかなかのもの。いかにも田舎から出てきたほっぺの赤いおばちゃん風なんだけど、けして愚鈍ではなく、フリーダの一挙手一投足に怒り戸惑い消沈する素直で繊細な女性をしっかりと表現しています。

終わり方がちょっと呆気にとられましたが、あれでいいのかなあ。


10点満点中6点。
タグ:Drama 6/10
posted by げんまいちゃ at 00:00| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。